11月23日 源氏物語 桐壺

<原文>
 この御子三つになりたまふ年、御袴着のこと、一の宮のたてまつりしに劣らず、内蔵寮・納殿の物を尽くして、いみじうせさせたまふ。それにつけても、世のそしりのみ多かれど、この御子のおよすけもておはする御容貌、心ばへ、ありがたくめづらしきまで見えたまふを、え嫉みあへたまはず。ものの心知りたまふ人は、かかる人も世にいでおはするものなりけりと、あさましきまで目をおどろかしたまふ。


<現代語訳>
 この御子が三歳になられる年、袴着の儀式は、一の宮がお召しになったものにも劣らず、内蔵寮・納殿の物を出し尽くし、盛大になさる。そのことについても、世間の非難が大変多いけれど、この御子の次第に成長していらっしゃる容姿、気立ては、滅多にないほど素晴らしくお見えになるので、憎らしくお思いなさることもできない。物事の道理をお分かりなさる方は、このような方もこの世にお生まれになるのだなあと、驚きあきれるくらい目を見張りなさる。

<語彙>
こと…儀式、行事
たてまつる…「乗る」「飲む」「食ふ」「着る」の尊敬語
のみ(副助詞)…限定、強調
およすく…成長する、大人になる、大人びる
もて…上下の動詞の間に入り「次第に」の意を表す。下の語は「行く」「おはす」に限られる
おはす…いらっしゃる
ありがたし…滅多にない
まで(副助詞)…(限界)~まで、(程度)~くらい、(添加)~までも
え~ず…~できない
妬む…憎らしく思う、悔しがる
あ(敢)へず…動詞の連用形に接続。「~しきれない」「~しようとしてできない」の意
心…道理をわきまえる心
いでおはします…お出ましになる、出てこられる、お生まれになる、「出で来」の尊敬語
けり(助動詞)…詠嘆
あさまし…驚きあきれるばかりである、興ざめだ
目を驚かす…驚嘆して目を見張る

<注釈>
この御子…光源氏
袴着…男子が初めて袴を着る儀式、3~7歳の間に行う
一の宮…弘徽殿女御の御子、後の朱雀帝
内蔵寮(くらづかさ)…中務省に属し、宮中の宝物などを納める倉を管理する役所
納殿(をさめどの)…宮中の宜陽殿にあり金銀、衣服、調度などを納めておくところ

テーマ : 古文 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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